塗装できない屋根の見極め方

建築業界においてもこういった新商品が作る光と影があります。
塗装という分野で言えば少しでも塗装に真面目に取り組めばすぐに学ぶことがあります。
それが「塗装をしてはいけない屋根材」に関してです。業界では暗黙の了解です。
この屋根材を使っていたら塗装を提案してはいけないということは入社してすぐに学ぶことの一つです。

塗装の時に注意する屋根材

ニチハ パミール
積水化学工業セキスイかわらU

ニチハ【パミール】 松下電工【レサス シルバス】 積水化学工業【セキスイかわらU】
※現在は松下電工とクボタは合併してケイミューになっています。積水化学工業は、現在は屋根材の販売はしていません。
※スレート屋根材に関してまとめています。スレート屋根とは瓦の一種でケイミュー社のコロニアル(商品名)に代表される屋根材のことを指します。平型の瓦が多いですが、波型や特殊な形をしているものもあります。コロニアルが広く広まったため、スレート屋根を一般名称としてコロニアルと呼ぶこともあります。また同じようにカラーベストと呼ぶこともありますが、これはケイミュー社のスレート瓦のシリーズ名称の一つです。

新商品が作る未来の光と影

テクノロジーは日々進歩しています。IT、バイオテクノロジーなどの分野などを見ていますとその進化はますます加速しているように思います。
テクノロジーが進化していくことで、人間の生活がより豊かになっていけばいいのですが、時としてそうならない場合が起きます。テクノロジーの進歩はそのまま企業の利益に直結します。例えば薬。新薬は莫大な金をもたらします。それで治らなかった病が治るようになることは素晴らしいことです。しかし、治験が不十分で予期せぬ副作用をもたらすという事象も起きています。この歪はこの新商品の開発競争から生まれています。
一番に作り出すことが大きな利益につながるからです。新薬で言えば特許を取れるかどうかにかかっています。この競争が結果として歪、光と影を生み出します。

アスベストと建築業界

少し話はさかのぼりますが、20世紀に「奇跡の鉱物」と言われて様々な用途に使われていたものをご存知でしょうか? 耐久性、耐熱性、耐薬品性に優れ、電気絶縁性を持ちしかも安価。答えは、アスベストです。日本語では石綿といいますね。ちなみにアスベストはオランダ語です。建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されました。理科室の実験道具でアルコールランプとビーカーの間に挟んでいたのが石綿付金網です。(現在はセラミック付金網になっています)

ところが、1970年代に入り、このアスベストが健康被害を起こすことが判明しました。髪の毛の1/5,000と言われる非常に微細な繊維を長期間大量に吸い込むと肺がんや中皮腫の誘因になるということがわかったからです。日本では1975年9月に吹き付けアスベストの使用が禁止され、2004年に石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止、2006年には同基準が0.1%以上へと改定されました。

さて、このアスベストが禁止、使用制限となる流れの中で対応を余儀なくされたのが、建築業界です。建築資材の多くにアスベストが使われていたからです。耐久性、耐熱性、耐薬品性に優れ安いという要素は建築資材においては非常に重宝されてきました。
少し話はそれますが、禁止、使用制限されたことで安心とは言い切れません。なぜなら、2020年から40年にかけて建築物の解体から発生するアスベストがピークを迎えると言われているからです。

話を戻します。建築業界はノンアスベスト建材の開発が急務になりました。また、ノンアスベストの商品の開発販売でシェアを広げることが各メーカーのビジネスチャンスになりました。各社が競争を激化していったことと思います。この時に歪が生まれてしまいます。

ノンアスベスト商品の
販売開始と販売停止

一番はじめにノンアスベスト商品として先陣を切ったのがセキスイかわらUです。1990年8月から販売が開始されました。もともとセキスイかわらUは1970年から販売が開始された商品で非常にシェアが高い商品で、そのノンアスベストバージョンになったものが販売開始されました。

次に出てきたのはニチハのパミールです。外装建材でのシェアが高い企業が屋根のシェア拡大を狙って攻め、1996年から販売開始されました。

その後販売されたのが、1999年から販売開始した松下電工のレサスです。松下電工は2001年にレサスの高級商品であるシルバスの販売を開始しました。

さて、1990年から2001年までに販売開始されたこのノンアスベストの屋根材の新商品ですが、現在も販売されているものはいくつあるでしょうか? 答えは1つ。コロニアルNEOだけです。(2017年3月現在)

セキスイかわらUは2013年に販売を停止、商品名としては40年以上の歴史に幕を下ろしました。その後積水化学工業は屋根材の開発販売事業をやめました。ニチハのパミールは2008年に販売を停止。そこに至る過程の中でネット上でもかなり問題視されましたが、メーカーは経年劣化とういことでリコールなどは出していません。

松下電工のレサス、シルバスに関しては後から出したシルバスが2003年、レサスは2006年に販売を停止しています。
最も短い販売期間だったのはシルバスの3年弱。レサスが7年弱。パミールが12年弱。セキスイかわらUは23年弱でした。

この結果から見ても分かる通り、初期のノンアスベスト商品は不具合が多い商品であったことがわかると思います。これがノンアスベスト商品の開発販売をビジネスチャンスにしようとした際に生まれた歪みです。この歪みは、当時家を建てた消費者の未来に暗い影を落とします。

結果塗装してはいけない
屋根材ができた

家は長く使うものです。その家の屋根に使われている商品が10年やそこらで不具合を起こすというのは大変に問題です。もちろん、長く住むにはメンテナンスは必須ですが程度というものがあります。屋根であれば10年でボロボロになってしまうということはありません。塗装などでメンテナンスをしながら10年、20年、30年と長く住み続けていきます。

ところがこのノンアスベストへの移行期に作られた屋根材は経年劣化などの試験が不十分で施工後短いと数年でクラックが発生したり、割れて欠落したりという不具合が起きました。上記で紹介した屋根材は、原則塗装はしてはいけない屋根材です。つまり、このような通常メンテナンスが出来ない商品ができてしまったということです。

これらの商品に関しては塗装以外でのメンテナンスが必要になります。それぞれの屋根材の特徴にあった施工をこれからご紹介いたします。

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